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タカさん 82歳 男性

特発性間質性肺炎を患い、ご自宅で在宅酸素を使用されながら妻と二人で生活されているタカさん。
動作時の息切れ・呼吸苦がある中でも、「何事も自分で頑張りたい」とのお気持ちが強い方でした。

初めてお会いしたのは契約の時。

驚いたことは、契約中にトイレへ向かう際、酸素を外して移動されたこと。戻る頃には唇は青くなり、息切れをしていました。
しかし「こうすると肺が鍛えられるからね」「苦しくないですよ」
と平然と話されるタカさん…。

衝撃的な始まりでしたが、看護師と連携しながら訪問することになりました。

“リハビリ”と言っても、まずはご自身の病気の理解をしてもらうところからでした。

「強めの訓練をしたい」
「筋肉がすぐにつく訓練はないか」




負荷の強いトレーニングを希望されるタカさんに対して、大きな戸惑いがありましたが、気持ちも受け止めつつ初めは肺や呼吸の状態についての説明をしました。説明後、少しずつ理解された様子で、「負荷の軽いものから徐々に始めていきましょう」と言う私に、タカさんは納得され、笑顔で取り組まれるようになりました。

タカさんは昔から何にでも挑戦され、家屋修繕や絵画など多くの趣味をお持ちでした。
70歳になってからも電気工事の資格を取得するなど、とても精力的に取り組まれていたそうです。

ある日、タカさんは言いました。
「今、病気になって今までやってきたことが出来なくなってきたのが寂しいよ…でもお風呂は好きだから自分の力で入り続けたいなぁ」

しかし関わり始めてから2カ月ほど経つと、徐々に体力や筋力が低下していき(これは予想通りの経過ではありましたが)歩くことがやっとの状態となり、さらには寝返りでも呼吸苦が出るようになっていきました。
そのため、介入から5ヶ月目に、入浴が清拭に変更されることになりました。

訪問入浴サービスの提案をしても、タカさんは拒否されました。
お風呂が好きだと言っていたのに…。

しかしある日、長男が訪問し入浴介助を行ってみたことをきっかけに、週1回のペースで再び入浴することができるようになったのです。

タカさんは介入から7ヶ月で亡くなられましたが、その時の話をするタカさんの表情はいまでもはっきり覚えています。笑顔で快活で、とても印象的でした。

なんと、亡くなる2日前まで自力で浴槽を跨ぎ、入浴をされたそうです。

サービスを拒んだのも、ただ入浴することではなく、どんなに苦しくても「自分の力で入浴する」ことに意味があったのだと気づかされました。

お悔やみ訪問の時にご家族にかけていただいた言葉。
「最期まで自分の力でお風呂に入る事ができて、お父さんらしい人生だった。ありがとうございました。」

「自分の力で」とは、これまでご自身で何にでも挑戦してきたタカさんだからこその目標だったのだと感じました。

訪問はご自宅に伺ってサービスを提供するだけではなく、その方の生活背景と感性に触れることができる良さがあります。その方の感性に触れながら、その方が笑顔になる、意欲的になれるものを探しリハビリへ応用していくことが、なにより大事な事だと気づかされました。

関わらせて頂いた利用者さま・ご家族に感謝しながら、また日々の訪問に向かいたいと思います。